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張弦

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    やはり昨日の中目黒は今まで以上の
    人出だったようで、ニュースでも
    取り上げていました。
    ほぼ歩けない状態が夜まで続いた
    との報道でした(苦笑)

    さて、たまには我らの世界のお話を
    一般の方はピアノの弦が切れるとか
    専門職に依頼して弦を張って
    (張弦といいます)貰うことなど、
    ほとんどご存知ありません。
    ギターやバイオリン、
    お箏や三味線の弦が切れることは
    た易くイメージできますね。
    そして演奏者が弦を張り替えます。
    ピアノの弦が切れることは
    そう多発することはないのですが
    ピアノは弦がたくさん張ってある
    楽器ですし、所詮は
    「張ってあるもの」ですから、
    やはり切れます。
    特別な弦という訳ではなく、
    一般的な硬鋼線です。
    88鍵(鍵盤は88個あり88の音が出る)
    に1本ずつ張られているのでは
    ありません。要するに
    1つの音に1本の弦ではなく
    高い音には3本、
    低い音になると2本、
    もっと低い音には1本、
    の弦が張られています。
    低い弦は巻線といって、
    硬鋼線に銅線が巻かれています。
    巻線も以前は素晴らしい
    「巻つけ技術」を持った職人が
    いらっしゃいましたが、
    今は世界的に減りました。
    私は留学から戻った後、
    時々ウィーンへ仕事に行きました。
    すると在日本の友人に、
    「悪いけどウィーンのAさんの
    工房に行って最低音の弦を巻いて
    貰ってきて…」
    と頼まれたことがありました。
    (日本にもまだ一人、その技術を
    お持ちの職人がいらっしゃるとか)
    当然、その巻線は機械巻より
    お値段は高い!
    しかし、職人もどんどん減っていて
    また、現在はそういう逸品を求める
    ピアニストが減りました。
    人の手巻きより機械巻の方が
    安定供給できるし、値段も…

    話は逸れましたが、
    レッスンで生徒さんに
    愛器の弦を切られる時ほど
    ショックで(笑)、
    心臓が激しくバクつきます。
    ピアノ本体も、やはりストレスを
    受けて不調になります。
    暴力的に弾いたから弦が切れる、
    という訳ではありません。
    やはり、ピアノの構造を知り
    常に鍵盤の上の指だけでなく、
    見えないピアノ・アクションに
    自分の力の伝わり具合を
    イメージして、タッチすべき、
    と生徒さんには常々話しています。
    あまりに直接的な打鍵は
    極力避けるべきです。
    そして、当たり前なのですが、
    自分の音を「聴きながら弾く!」
    ある意味、リラックスした耳で
    音を「聴く意識」が大変大切です。

    残念ながら、そのような訳で
    ピアノの弦は
    ピアニストは自分では張れないし、
    また、張っていただいたあと、
    どんどん弾いて、弦が安定するまで
    何度も何度も調律師さんに
    足を運んでいただき
    調律、調整をしていただきます。
    やっと安定してきたかな?
    と思うまで、毎日毎日、
    新しい弦だけでなく、
    その弦にも近い周囲の弦たちの
    ご機嫌も伺いながら弾きます。

    ちなみに1本の弦の張力は80kg。
    平均的な数値を申せば
    1つの鍵盤に3本弦で274kg…
    オーソドックスなグランドピアノ
    1台の弦の総張力は約2トン。

    今日もレッスンの合間に
    調律をしていただきました。
    ピアニストは調律師さんなくしては
    存在出来ません(笑)
    保護者の皆様に
    是非お分かりいただきたいのは
    ピアノ・レッスンのお月謝には
    こういう表面には見えない経費も
    含まれているということです。
    2台あれば2台、
    そして、ピアノのレッスンには
    色々な備品も必要なのです。
    ピアノを弾く子どもの足が
    ぶらぶらしないように足台!
    この足台も種々あります。
    どれを選ぶかも大変なのです。

    門下のピアノの先生方が
    電子ピアノをご使用の生徒さんの
    保護者の方から色々なご意見を賜り
    少し困惑していました。
    目が点になったひとことは、
    そのような大変な調律が必要なら
    電子ピアノで良いじゃないですか!
    とまで言われたそうです。
    まぁ、確かに…
    アハハハのハ!

    その世界その世界、
    皆が分かることばかりでは
    ありませんが
    たまにはこんな裏事情を…
    山季布枝 * 山季の気まぐれブログ * 11:30 * - * - * - -
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